■ きっかけ

• 長時間(１年間)の温度データなどを蓄積するデータロガーを探してみたところ、気に入ったものが有りませんでした。
• 無ければ作ればいいのぁ、という程インターネット上に資料も転がってはいませんでした。
• 「自分が気に入った動作なら、それが仕様なのだ」という意気込みで製作が進められました。

■ こんな感じで

• 目標として以下を考えてみました。
  • １年間以上のデータ値が記憶できること。通常は商用電源で動作し、停電でもデータが失われないこと。
  • 汎用的なインターフェースとしてシリアル通信を採用。
  • データの吸い上げはパソコンを利用する。
  • 経時記憶機能やデータ消去も単体で出来ること。
  • H8/3052F を適用し、記憶媒体には Flash Memory (フラッシュメモリ)を使う。
• SD カードは魅力的ですが、本機を友達にプレゼントした時にライセンス違反(苦笑)になるのかな？
• こんなところで開発を進めましたが、あれもこれもとコマンドが欲しくなり、途中で引き返せなくなってしまって、結構ふくれ上がってしまいました。

■ ハードウェア

• 製作した基板の写真です。引続き、関連事項を説明します。
  
  
  

  

• CPU 基板にはみんなが使っている H8/3052F を利用してます。ただ、電源を 3.3V にしているため、CPU 基板上のレギュレータを利用せず(チップの足を浮かす)、写真(B)の部分でジャンパーしています。
• CPU 基板上のリセット IC は 5V 電源時用なのでこれも利用せず、写真(E)の部分でチップの足を浮かしています。
• 外部電源は DC 6V の AC アダプタから供給されます。写真(C)。
• 写真(A)は、書き込み設定のスイッチ部で、米粒のようなショートコネクタにカバーを付けて持ち易くしています。
• 写真(D)が、今回の心臓部である Flash ROM の部分です。東芝の NOR 型の FLASH ROM で、TC58FVM6T5BTG(64M=4M*16)を採用しています。システムが 3V 系になったのひとえにこれとの関係です。
  • このメモリは最大 8,000,000(=64,000,000bit/8byte)バイト書き込めるので、ロギングすべき基本データ長を 128 byte (１フィールドと定義)としておくと、62,500 フィールド(回)書き込めることになります。これで、１ 時間に 7 回のデータログが取れることになりますね。
  • このチップは 16 bit のデータ幅でインターフェースするため、H8 の FLASH メモリ領域に割り当てるセグメントも 16 bit 対応に設定しておきます。
• リアルタイムクロック(RTC)も搭載しています。これの電源バックアップは円形リチュームバッテリーを使いました。通電時は VCC(3.3V)から電源供給。
• ウォッチドッグは外部(ユーザ基板側)に持たせてます。CPU 内蔵の WDT は使いにくかったので未使用状態です。
• CPU のモードは mode=6 です。

■ ソフトウェア

• 具体的にはソースファイルをご欄下さい。 デバッグ用としてのシリアル出力プログラムも含まれています。
• シリアルデータの入出力については、割り込み処理(バッファリング)を適用しましたが、このあたりは先達の方のプログラムを利用させてもらいましたが興味深いところですね。ただ、バッファのオーバーフローが発生することから、シリアルコンソール側(SCI1)は 38400BPS に設定はしているものの、一部直接にデータを吐き出したりして、プログラムは汚いものになってます。また、データ入力側(SCI0)は、2400BPS しか試していません。
• この試作基板で使っていたメモリチップの全体の消去時間は 80 秒程度でした。消去手順はコマンド発行によってますが、終了ステータスを見つつ、不具合時のループを避けるためにタイマーを仕掛けています。
• 課題であった FLASH ROM の書き込み関係の資料としては、書籍では「トランジスタ技術 2004/11」しか見当たりませんでした。また、インターネットをそれなりに検索したのですが有益な情報も見当たらず、結局はマニュアルを読むことで解決しました。
• 書き込み手法として、一番簡単な方法を用いているので速度が遅いですが、そも 10 分に１回程度の書き込みなので十分です。ちなみに、この安直な方法で全データを書いてみると半日経っても完了しませんでした。(笑)

• データフォーマット:
  • データ入力は 2400BPS, 7Bit 偶数パリティである。
  • 最大 128 バイトまでとなっている。
  • STX、、、、、ETX、SUM1, SUM2、デリミタというプロトコルで、SUM1, SUM2 は STX(を含み)から ETX(含まない)までの加算値(１バイト)の各ニブル。この 16 進は大文字アルファベットである。
  • デリミタは CR を想定していたが、現在":"にしてある。(端末でデバッグがしにくいため)
• シリアルコンソール：
  • パワーオンメッセージ、書き込み中のアドレス表示、バージョン表示、ヘルプ表示。
  • 時間設定、経過時間表示コマンド。
  • オールイレーズコマンド、記憶データ表示コマンド。
  • ダミー書き込み、デバッグ用の各種コマンド。
  • 実行中止コマンド(ESC)。
• ディップスイッチ：
  • 動作モード(1分毎書き込み or 10分毎書き込み)がある。
  • アップロード(SCI1)モードがある。
  • オールイレーズモードがある。
• 7 セグメント表示：
  • 通常動作モード表示として、"A" 表示。
  • 内容クリア＝"C"、消去パス="P" 表示。
  • 一定時間データが到来しないと "H" 表示。
  • パリティエラーの有無の表示(ドットの点灯有無)
  • この他、書き込み中の表示など。

■ 備考・感想

• 暫定仕様ですので、強化したり、補足したり、改良したりする部分が残っています。
• 開発環境としては、FreeBSD 上で適当にコンパイルしています。

  # /usr/local/cross/bin/h8300-hms-gcc  -v
  Reading specs from /usr/local/cross/lib/gcc-lib/h8300-hms/2.7.2.3/specs
  gcc version 2.7.2.3
  

  ただ、バイナリー表記ができるように gcc-2.7.2.3/c-lex.c を変更しました。
• 最終手前までのハードデバッグが終わるまでは、電源電圧を 5V で行ってました。これは未経験である FLASH ROM インターフェース(ハードとソフト)での障害切り分けを楽にしようと考えたからです。
• CPU としては 3052F を利用してますが、3048F でも動作可能なはずです。なので、3048F の定義ファイルを用いています。
• TC58FVM6T5BTG65、 H8/3052F、 ETM09J_01_RTC-4543SA、 TPS3823などの資料は、pdf ファイルとして各メーカに用意されています。
• すでに何人もの方々が言い尽くしていることでしょうが、「だまされるやつがアホだ」と言うぐらいに強い主張をする小奴、まさにコネクタがぶつかってしまいデバッグボードを作り直されるはめに。

  

• より詳細なところは、ご質問があった都度に補足をして行きたいと思います。